焚き火やバーベキューの最中に頭がズキズキしてきた。そこそこ危ない状況かもしれないので、前置きは飛ばします。
私は週3で焚き火をしている焚き火好きで、同時に病院勤務19年の臨床検査技師です。血液のガス分析を回してきた側なので、一酸化炭素中毒が数字としてどう出るかは見てきました。その両方から書きます。
この記事でわかること
- いますぐやること: 火から離れて風上へ。5分で軽くなるかを見る
- 原因の切り分け: 幕の下なら一酸化炭素、屋外なら脱水と熱中症を先に疑う
- 危ない濃度: 締め切った6畳の七輪は約50分で700ppmに達する(東京消防庁の実験)
この記事の結論(先に要点)
頭上に屋根・幕・タープがある状態で炭や薪を燃やしていて頭痛が出たなら、一酸化炭素中毒として動いてください。人が先に離れて、風上で外気を吸う。吐き気やめまいまで来ていたら救急車です。完全な屋外で風が抜けていて、帰宅後に痛くなったのなら、脱水・熱中症・飲みすぎのほうが確率は高いです。
バーベキューや焚き火の最中に頭痛がしたら、まず火から離れる
火から離れて風上へ移動し、外の空気を5分吸ってください。それで頭痛が軽くなるなら、一酸化炭素中毒を疑う場面です。
順番を間違えないでください。先に人が離れて、火の始末はあとです。炭に水をかけると白い煙が一気に立ちますし、中途半端に消すと煙はむしろ増えます。消火にこだわって現場に留まるのがいちばん悪い動きです。
- 1. 離れる: 火から5m以上、風上へ。テントや幕の中なら外に出る
- 2. 開ける: その場を離れられないなら、入口とベンチレーターを全開にする
- 3. 見る: 同席者にも頭痛・吐き気が出ていないか声をかける
- 4. 呼ぶ: 吐き気・めまい・ふらつきがあれば119番。歩けるうちに呼ぶ
軽度なら新鮮な空気を吸って安静にしていれば回復します。重度は高濃度の酸素を吸う治療が要るので、迷ったら呼んでください。
屋根や幕の下で火を使っていたなら、一酸化炭素中毒を疑う
締め切った6畳で七輪を焚くと、約50分で700ppmに達します。3〜4時間吸うと意識障害が起きる濃度です。
東京消防庁の実験(消防技術安全所報49号・平成24年)で本当に怖いのは、そこではありません。同じ部屋の酸素濃度は19.6%までしか下がらず、そこで安定していた点です。低酸素症が出るのは18%以下なので、息苦しさは出ません。「苦しくないから大丈夫」が当てになりません。一酸化炭素は無味無臭で、酸欠の息苦しささえ先に来ない。気づける手がかりが頭痛しかないのです。
この実験では、100分後に扉を10分開けて換気しても、濃度は基準の10ppm以下までは戻りませんでした。「ちょっと開ければ大丈夫」も期待しすぎです。
濃度と症状の対応は、厚生労働省の表がわかりやすいです。
| 空気中のCO濃度 | 吸入時間と症状 |
|---|---|
| 200ppm | 2〜3時間で前頭部に軽度の頭痛 |
| 400ppm | 1〜2時間で前頭痛・吐き気、2.5〜3.5時間で後頭痛 |
| 800ppm | 45分で頭痛・めまい・吐き気・けいれん、2時間で失神 |
| 1600ppm | 20分で頭痛・めまい・吐き気、2時間で死亡 |
200ppmで軽い頭痛が出るということは、頭痛を感じた時点で数百ppmの中にいた可能性がある、ということです。
屋外のバーベキューで後から来る頭痛は、脱水と熱中症のほうが多い
屋外で風が抜けていたなら、一酸化炭素より脱水・熱中症・アルコールのほうが確率は高いです。
一酸化炭素中毒の頭痛は火のそばで出て、離れると軽くなります。逆に現場では平気で、帰り道や翌朝に頭が痛いのなら、CO以外を先に考えたほうが当たります。
- 脱水: 炭火の前は汗の量が読めない。ビールだけだと利尿で差し引きマイナスになる
- 熱中症: 体温が上がっていなくても、暑い場所のあとの頭痛・吐き気・だるさは初期症状
- アルコール: 昼から屋外で飲むと血管が広がり、脱水と重なって頭痛になりやすい
- 煙の刺激: 目や喉が痛くなるほど煙を浴びると、それだけでも頭が重くなる
私はバーベキューのとき、水か経口補水液を必ず1本持っていきます。ビールはそのあと。順番を逆にした日は、だいたい帰りの車で頭が痛くなっていました。車に積みっぱなしにできるので箱で買っています。
一酸化炭素中毒と熱中症の見分け方
同じ場にいた全員が同時に頭痛を訴えているなら一酸化炭素、ひとりだけなら熱中症や飲みすぎを先に疑います。ガスは人を選ばないからです。
| 見るところ | 一酸化炭素中毒 | 熱中症・脱水 |
|---|---|---|
| 出るタイミング | 火のそばにいる最中 | 数時間後・帰宅後が多い |
| 誰が | 同じ空間の全員が同時に | 体調の悪い人ひとりから |
| 離れると | 外気を吸うと軽くなる | 離れても変わらない |
| 場所 | 幕・タープ・車内など屋根の下 | 炎天下の完全な屋外でも起きる |
ただし現場での目安です。病院なら血液ガス分析で一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)を測れば白黒がつきます。迷って救急外来にかかるのは無駄ではありません。
頭痛のあとどう進むか、後遺症は残るのか
頭痛は最初の症状です。吐き気、めまい、運動障害、眠気と進み、最悪の場合は死亡します。自力で歩けるうちに離れてください。
ほかに錯乱、けいれん、息切れ、判断力の低下が出ます。厄介なのは進み方で、運動障害と眠気が来ると、助けを呼ぶことも離れることもできなくなります。判断力が落ちてから逃げようと考えるのは無理なので、頭痛の段階で動く必要があります。建物火災で亡くなった方の死因も一酸化炭素中毒・窒息が36.5%で最多です(令和6年版消防白書)。
後遺症についても。急性期の治療が済んだあと、数週間してから遅発性の精神神経症状が出ることがあります。
- 認知・記憶の障害: 記憶が抜ける、新しいことを覚えられない
- 運動の障害: 協調運動がうまくいかない、パーキンソン症状
- 気分の障害: 抑うつ、意欲が出ない
- 慢性的な頭痛: 中毒が治まったあとも続く
数か月で自然に回復することもあれば、数年単位の治療が必要になる例もあります。起きる割合は報告に幅があり、調べた範囲では一つの数字に収束しなかったので、「まれではあるが起こる」以上は書きません。ただ症状が重かったなら、一度病院で血液ガスやMRIを受けてください。初期治療が効くのはこの部分です。
テント・タープ・車内は「屋外」に入りません
幕やタープの下、そして車内は屋外ではありません。実際の事故は、この半分だけ閉じた空間で起きています。
テント内でガスコンロを使うのも同じ理由で危険です。換気が足りない場所で火を使えば、酸素を消耗して不完全燃焼が起き、一酸化炭素が急に増えます。煙突を外に出せる薪ストーブ対応の幕は別として、それ以外の幕内で火気を使うのは避けてください。テント入口のすぐ外でバーベキューをして、中の子どもが頭痛を訴えた事例もあります。
それでも幕内で火を使う人(私も冬はやります)は、一酸化炭素チェッカーを吊るしてください。CO濃度は床より天井が高いので、地面に置かず目線より上が正解です。数千円で、頭痛より先に鳴ります。
意外と煙を吸っているのは撤収のときです。熾火に水をかけると白い煙が一気に立つので、消火は風上に立ってください。炭の消し方と持ち帰り方は炭は川に流すのも埋めるのもNG|焚き火・バーベキューの炭の消火と片付け方にまとめています。
よくある質問
Q. 喘息があっても焚き火やバーベキューはできますか?
A. 発作の誘発になり得るので、とくに小児では控えるのが無難です。ぜん息キャンプの運営マニュアルでは、指導員のもとで煙が当たらないよう配慮すれば問題ないとされています。家族だけなら、心配な日は見送ってください。
Q. 一酸化炭素はにおいでわかりますか?
A. わかりません。無色・無臭・無刺激で、空気とほぼ同じ重さです。手がかりは炎の色で、正常な燃焼は青。赤くなっていたら不完全燃焼を疑ってください。
Q. 頭痛が治まったら病院に行かなくても大丈夫ですか?
A. 頭痛だけで、外気を吸ってすぐ楽になったなら経過を見て構いません。吐き気・めまい・ふらつきが出た場合や、意識が飛んだ時間がある場合は受診を。遅発性の症状は数週間後に出るので、そのときは中毒を医師に伝えてください。
焚き火にはぼーっと見続けてしまう性質があって、気づくと集中しきっています。その状態がいちばん危ない。焚き火の効果を安全に味わうためにも、火を焚く場所と換気は座る前に決めてください。
